【斎藤視点ver.】 斗南の冬は相変わらず厳しい。 雪は絶え間なく降り積もり、 千鶴は仕事に出かける俺に「必ず差して帰るように」といつも傘を持たせるけれど。 「もう、一さん!また傘を差さずに帰って来たんですね!?」 「ああ…すまない」 雪まみれの俺を出迎えた彼女は、 これまたいつものように大慌てで布を抱えてきて。 それから、小言を言いながらもまとう雪を丁寧に払い落としてくれる。 怒ったように、呆れたように、でも気遣わしげに触れてくる その優しい温もりを感じたくて、 心配させると解っていても、この子供っぽい真似がやめられない。 「今日という今日はお説教ですからね!聞いてますか?」 ああ、やっぱりまた怒らせてしまった。 新選組にいた頃は万事控えめな少女だったのに(でもいざとなると驚くほど頑固だったが)、 最近はもっぱら立場が逆転している。 でも、そんな怒っている顔さえ 愛しい と思っている自分は 「…もう拭いてはくれないのか?」 「〜〜〜〜〜〜〜知りませんっ!!」 きっと “恋に溺れている” と言うのだろう。 |